7.病気やケガをしたときの社会保険手続
ケガをした場合、健康保険または労災保険から給付金がでます。
健康保険
被保険者及び被扶養者の、業務外による病気・ケガ・死亡、出産に対し給付を行う保険
労災保険
(正式には「労働者災害補償保険」といいます)
労働者が業務上と通勤中におけるケガ、病気、死亡に対し労働者と死亡した労働者の遺族に対し給付を行うための保険
ここでは、給付金の中身を順にみていきましょう。
7-1 健康保険からの給付
まず健康保険の給付についてみてみましょう。
区分 | 給付の種類 | ||
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被保険者 | 被扶養者 | ||
病気やケガ をしたとき |
被保険者証で 治療をうけるとき |
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立替払いのとき |
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緊急時に移送されたとき |
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療養のため休んだとき |
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(給付されません) | |
死亡したとき |
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7-2 被保険者証で治療をうけるとき
「風邪をひいて診療所へ行く」「歯が痛くて歯医者へ行く」となった時に、保険証を提出してお金を払って帰ってきますね。薬をもらうときにも保険証を出してお金を払いますね。この時支払っているのは治療費の3割となっています。健康保険で一番身近な給付といえます。
療養の給付・家族療養費
病院や診療所に健康保険証を提示することで給付を受けることができます。また、医師から処方箋をもらった場合は保険薬局での調剤もしてもらえます。
自己負担額は次のとおりです。
- 療養の給付(被保険者本人)なら外来、入院いずれも治療費の3割、70歳以上の人は1割(一定以上所得者は2割)を負担します。
- 家族療養費(被扶養者)なら外来、入院いずれも治療費の3割、3歳未満は2割、70歳以上の人は1割(一定以上所得者は2割)を負担します。
入院時食事療養費
入院中の食事の費用は、入院患者の自己負担が780円となっています。これを上回った部分が入院時食事療養費として給付されます。
特定療養費
大学病院等で高度な医療をうけたとき、病院での診察料や入院料は特定療養費として給付されます。高度先進医療部分は自己負担です。
自己負担額は、本人・家族ともに外来、入院いずれも治療費の3割、3歳未満は2割、70歳以上の人は1割(一定以上所得者は2割)となっています。
訪問看護療養費・家族訪問看護療養費
在宅の末期がん患者や難病患者等が、医師の承認のもとで派遣された看護師に療養上の世話や必要な補助をうけたときに支給されます。
自己負担額は、本人・家族ともに費用の3割、3歳未満は2割、70歳以上の人は1割(一定以上所得者は2割)となっています。
7-3 立替払いをしたとき
立替払い、とは例えば次のような場合のことをいいます。
- 病院へいくときに保険証を持っていくのを忘れた
- 医者の承認のもと、コルセット等を装着することになった
- 海外で病院の診察をうけた
この場合、診察が終了した時は治療費の全額を支払い、後日申請して払い戻しを受けることになります。このような給付を療養費といいます。
自己負担額は、本人・家族ともに費用の3割、3歳未満は2割、70歳以上の人は1割(一定以上所得者は2割)となっています。ただし、入院時の食事療養費は780円は自己負担です。
提出書類
- 被保険者・家族 療養費支給申請書
- 領収書など
7-4 緊急時に移送されたとき
移送費とは、病気やけがの治療のため、または入院や転院しなければならないとき、医師が認めた場合で歩行することが著しく困難な場合等であれば、自動車などを利用したときの費用が後日申請して払い戻しを受けられる、というものです。
支給される額は、「最も経済的な通常の経路および方法により移送された費用を基準に算定された額(その額が実費を超えた場合は実費)」です。基準内であれば、被保険者は移送費として、被扶養者の場合は家族移送費として全額支給されます。
☆「診療を受けるための普通の通院費用」は認められません。
提出書類
- 被保険者・家族 移送費請求書
- 領収書
7-5 療養のため休んだとき
被保険者が業務外の病気やけがの治療のため仕事につくことができないで、給料等をもらえないときは、被保険者と家族の生活を守るために傷病手当金が支給されます。
☆業務上あるいは通勤途上の事故や災害により病気やけがをしたときは、労災保険の扱いとなります。
支給の条件
支給を受けられるのは、下記の4つのすべての条件に該当したときです。
- 病気・けがのための療養中のとき
病気・けがのため療養しているのであれば、自宅療養でもよいことになっています。 - 療養のために仕事につけなかったとき
病気・けがのために、今までやっていた仕事につけない場合をいいます。 - 連続3日以上休んだとき
3日以上連続して休んだ場合で4日目から支給されます。はじめの3日間は待期といい支給されません。 - 給料等をもらえないとき
給料等をもらっても、その額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。
もらえる給付額
病気やけがで仕事を休み給料等がもらえないとき、休業1日につき標準報酬日額の60%相当額が支給されます。ただし、休業開始4日目から1年6か月間となります。
提出書類
傷病手当金 請求書
7-6 死亡したときの健康保険からの給付
家族のだれかが死亡したときには埋葬料が支給されます。自殺の場合でも支給されます。
本人が死亡した場合
本人によって扶養されていた遺族に埋葬料が給付されます。
給付される金額は、死亡した本人の標準報酬月額の1か月分(最低保障額100,000円)です。
被扶養者が死亡した場合
本人に家族埋葬料が支給されます。
給付される金額は、一律100,000円です。
家族や身近な人がまったくいない場合には、実際に埋葬を行った人に、埋葬料の範囲内で実費が埋葬費として支給されます。
提出書類
- 被保険者・家族 埋葬料(費)請求書
- 死亡したことを証明する書類(死亡診断書・埋葬許可証または火葬許可証の写し)
- 埋葬費の請求の場合は、死亡証明のほかに埋葬にかかった費用の領収書が必要です。
7-7 労災保険からの給付
今までは健康保険からの給付についてみてきました。ここからは労災保険からの給付についてみてみましょう。
まず労災には、次の2種類があります。
業務災害
業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と災害との間に一定の因果関係が存在することをいいます。
通勤災害
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。通勤とは、会社と家との間を合理的な経路及び方法により往復することをいいます。会社と家との往復中に寄り道をした時に事故にあっても、それは通勤災害にはなりません。
7-8 負傷したとき
療養補償給付(業務災害)または療養給付(通勤災害)
業務上および通勤途上の傷病は健康保険での診療を受ける事はできません。労災保険で診療を受けます。給付は傷病が治ゆするまで行われます。
休業補償給付(業務災害)または休業給付(通勤災害)
労働者が、業務上又は通勤による負傷や疾病による療養のため労働することができずそのために賃金を受けていないときに、休業第4日目から支給されます。
※休業してから3日間は、会社から休業補償が行われます。
傷病補償給付(業務災害)または傷病給付(通勤災害)
休業(補償)給付※を受けている労働者が、療養開始後1年6か月経過しても治癒せず一定の障害状態にある場合に支給されます。
必ずしも休業(補償)給付を受けている必要はありません。
障害補償給付(業務災害)または障害給付(通勤災害)
業務上および通勤途上の傷病が治ったけれども、身体に一定の障害が残った場合に支給されます。
介護補償給付(業務災害)または介護給付(通勤災害)
障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の第1級の方すべてと、2級の精神神経・胸腹部臓器の障害を有している方が現に介護を受けている場合に支給されます。
7-9 死亡したときの労災保険からの給付
遺族補償給付(業務災害)または遺族給付(通勤災害)
労働者が、業務上又は通勤途上で死亡したとき、遺族に対して支給されます。
遺族(補償)給付には 遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金があります。遺族(補償)一時金が支払われるのは次のいずれかの場合です。
- 労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合
- 遺族(補償)年金の受給権者が最後順位まですべて失権した時点で、今まで支払われた年金の額及び前払い一時金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合
葬祭給付(葬祭料)
業務災害 又は通勤災害により死亡した人の葬儀を行う遺族に支給されます。「葬儀を行う遺族」とは、葬儀を執り行うのにふさわしい遺族を指します。遺族がいなくて社葬として葬儀を行ったときは、その会社に支給されます。