9.退職時の社会保険手続

社員を退職させるときの手続きについてみてみましょう。

9-1 通常の退職の手続き

60歳未満の人が退職するときに必要な手続きです。

社員を退職させるときの手続きについてみてみましょう。

提出先 提出する書類 手続きの内容
社会保険事務所または健康保険組合へ 健康保険・厚生年金保険
被保険者資格喪失届
健康保険被保険者証を添付して退職日の翌日から5日以内に。添付できない場合は被保険者証回収不能届を添付する
任意継続被保険者
資格取得申請書
被保険者期間が2か月以上ある退職者が資格喪失後も引き続き被保険者であることを希望する場合に退職の翌日から20日以内。
ただし、被扶養者がいる場合は、健康保険被扶養者(異動)届の添付が必要
公共職業安定所へ 雇用保険被保険者資格喪失届 労働者名簿を添付して、退職日の翌日から10日以内に
雇用保険被保険者離職証明書 退職者が雇用保険被保険者離職票の交付を希望する場合に、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、及び雇用保険被保険者資格喪失届を添付して退職日の翌日から10日以内に

☆『雇用保険被保険者離職票』の交付を希望しない場合は、その旨を証明できれば『雇用保険被保険者離職証明書』の添付は必要ありません。ただし、離職日に満59歳以上である被保険者の場合は『雇用保険被保険者離職証明書』を添付する必要があります。

9-2 退職後でももらえる給付

60歳未満の人が退職するとき、条件によっては、傷病手当金や出産手当金などの給付金をうけられることがあります。

退職したあとでももらえる給付があります。ただし条件があります。気をつけてください。

傷病手当金

<条件>次の2つとも満たしていないともらえません。(傷病手当金の継続給付といいます)

  1. 健康保険の被保険者資格を喪失した時点で、傷病手当金を実際に受けている、または、受けうる状態であること。
  2. 健康保険の被保険者資格を喪失した日の前日までで、被保険者期間が引き続き1年以上あったこと

【例】傷病手当金の場合、連続3日以上休んで(待期といいます)4日目から支給されますが、待期中に退職しても傷病手当金は支給されません。

出産手当金

<条件>次の1と2(出産手当金の継続給付といいます)、または1と3を満たしていないともらえません。

  1. 健康保険の被保険者資格を喪失した日の前日までで、被保険者期間が引き続き1年以上あったこと
  2. 健康保険の被保険者資格を喪失した時点で、出産手当金の支給を実際に受けている、または、受けうる状態であること。
  3. 被保険者であった者が、資格喪失後6か月以内に出産したこと

【例】出産予定日が資格喪失日から6か月以内であっても、実際の出産日が喪失日から6か月を過ぎている場合には、出産手当金は返還しないといけません。

出産一時金

<条件>次の2つとも満たしていないともらえません。

  • 健康保険の被保険者資格を喪失した日の前日までで、被保険者期間が引き続き1年以上あったこと
  • 被保険者であった者が、資格喪失後6か月以内に出産したこと

☆資格喪失後は家族出産一時金は支給されません。

埋葬料

<条件>次のどれかにあてはまる場合に支給されます。被保険者期間は関係ありません。

  • 被保険者であった者が、傷病手当金、または出産手当金の継続給付を受けている期間中に死亡した場合
  • 被保険者であった者が、傷病手当金、または出産手当金の継続給付の支給が終わったあと3か月以内に死亡した場合
  • 被保険者であった者が、資格喪失後3か月以内に死亡した場合

9-3 60歳以上の人が再就職したときの給付

60歳以上の人が退職後、さらに再就職する場合に雇用保険から給付金がでます。

60歳以上65歳未満の人が、60歳時点の賃金の75%未満の状態で再就職していると、雇用保険から受けられる給付金があります。この給付金は、本来は従業員自身が行うものではありますが、労使協定などで会社が申請するように決めておくとよいでしょう。手続きは公共職業安定所で行います。

高年齢雇用継続基本給付金

<条件>次の3つとも満たしていないともらえません。

  1. 60歳になった後も続けて勤めているか、一度退職したが失業給付を受けずに1年以内に再就職した
  2. 60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であって、支給対象月の賃金額が60歳時の賃金月額の75%未満の状態で雇用されている
  3. 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある

<支給月額>被保険者が60歳に達した月から65歳に達する月まで給付があります。

支給対象月の賃金額が
60歳時の賃金月額の
支給月額
61%未満 支給対象月の賃金額×0.15
61%以上75%未満 60歳到達時の賃金月額×約50%から
一定の割合で逓減する率
75%以上 支給なし

高年齢再就職給付金

<条件>次の4つとも満たしていないともらえません。

  1. 60歳になった後一度退職し、失業給付を受けたことがある人が再就職した
  2. 失業給付をの支給残日数が100日以上ある
  3. 60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であって、支給対象月の賃金額が60歳時の賃金月額の75%未満の状態で雇用されている
  4. 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある

<支給月額>

支給対象月の賃金額が
60歳時の賃金月額の
支給月額
61%未満 支給対象月の賃金額×0.15
61%以上75%未満 直前の離職時の賃金月額×約50%から
一定の割合で逓減する率
75%以上 支給なし

≪もらえる期間≫被保険者が65歳に達した場合は65歳に達した月までとなります。

基本手当の支給残日数 支給期間
200日以上 2年間
100日以上200日未満 1年間
100日未満 支給なし